環境パートナーシップエコサロン

「環境の心―宮沢賢治と水質改善」
平成13年8月17日

8月17日金曜日、環パちばの第二回エコサロンが開かれた。
今回お越し下さったのは、千葉県衛生研究所、水質保全研究所で31年間の経験をもつ小林節子さん。今年3月に早期退職され、現在はNPO法人「環境文明21」、「環境イーハトーブの会」で活動をされている。仏教や日本の食文化にも強く着目し、我々が良く知っている宮沢賢治の作品から、現代人が失いかけている"環境の心"を熱く示して下さった。

1.環境の心「環境倫理」とは?
従来の倫理は、人間と人間の間だけの"狭い"倫理であるのに対し、「環境倫理」は南北間倫理(国、地域同士・・)、世代間倫理(将来へ・・)、生き物倫理(地球上すべての生き物に・・)つまり、空間、時間、環境の心「環境倫理」とは?生態系と3つの視点が必要である。また、環境問題を解決するためのキーワードは「技術」「社会制度」「価値観」「循環」「共存」「抑制」と六つあるが、環境倫理は「価値観」にあたる重要な部分である。
では、どんな「価値観」を作って行けばいいのだろうか。まず、日本人の思考の特徴はもともと持っていたものに、外来した仏教が溶け込み混ざり合ってできたもので、 @集団思考、A現世利益、B感覚的で情緒的、Cシャーマニズムの要素がある。環境破壊の背景には、そんな日本人の特徴からも引き起こされた部分もあるだろう。個人の本音を大事にし、利益にとらわれず、自然の生態系を中心にすえた考え方を"論理的"に示していくことが大切である。


2.印旛沼や手賀沼の水質汚濁の調査研究に携わって
水は川→海→雲→雨→川・・と循環され、生態系を造る大きな要素の一つと考えれば、多くの生物が住み育める水が理想である。その理想の水をつくる上で重要なことは、しっかりと環境基準達成までの道筋を定めること、水質浄化施設の効果の評価と維持管理、また下水道と浄化施設は違う管轄でやるというような縦割りの弊害をなくすこと、そして市民の積極的参加である。
手賀沼の事例では、行政側のビオパークの提案に対し、市民・研究者が反対し、代わりにビオトープを作りあげた。手賀沼の再生事例で、もう一つ注目したいことは、潜在自然植生を回復後の目標としている事である。潜在自然植生とは、昔からそこに生えていた植物で、一番その土地の環境、生態系にあっている。新しいものを持ち込むのでなく、土さえもその場所のものを使うとよい。手賀沼ビオトープでは、湧水を作るため掘り返した土から眠っていた種が目を覚まし、植生が一部復活している。


3.宮沢賢治の作品にみる"環境"の心
賢治は生前出版した唯一の童話集「注文の多い料理店」の最後でこう述べている。
「・・・・・これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。」
賢治の童話の中には、いくつもの環境倫理の答えが隠されている。
ここではその一部を紹介する。

「銀河鉄道の夜」
銀河鉄道は死後の世界である。
ジョバンニは(賢治は)
タイタニック号で海に沈んだ女の子にこう言った。
「天上へなんか行かなくたっていいじゃないか。
ぼくたちここで天上よりももっといいとこを
こさえなきゃあいけないって・・・」
今生きているこの世界に理想の世界(イーハトーブ)を
つくろうとすることの大切さ、
また、キリスト教徒である女の子が
南十字星で降りることは、
異文化の尊重につながる。

「なめとこ山の熊」
猟師の小十郎は生活のために熊を獲る。
熊は町で安値で売られ、また獲られる。
何度も繰り返し、最後は小十郎は熊に殺されてしまう。
だが、熊たちは死んだ小十郎の周りに集まり、ずっと動かなかった、
と物語は終わる。
共生とは厳しくともお互いに敬意を持つことであり、
また、地方への愛情と知識が感じられる作品でもある。

「よだかの星」
「ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される。
そしてそのただ一つの僕が今度は鷹に殺される。
それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つらい。
僕はもう虫をたべないで飢えて死のう。
いやその前にもう鷹が僕を殺すだろう。
いや、その前に、僕は遠くの遠くの空の向こうに行ってしまおう。」
生態系の食物連鎖を描いたこの話は、逃避の物語ではなく、
問題に向かい合って解決していこうという姿勢を表したものと、小林さんは解釈している。

「雨ニモマケズ」
賢治が病床で書いた「雨ニモマケズ」は、詩というよりも、
むしろ賢治の"祈願"であり、曼陀羅などたくさんの信仰と共に手帳につづられていた。
ここでは法華経の智慧と慈悲に注目したい。
「ヨクミキキシワカリ ソシテワスレズ」
智慧は道理をみる事であり、環境ならば「自然の法則の不変性」をみることである。
原因、結果、原因、結果・・でみていくと、すべてが繋がっていく。
「東ニ病気ノコドモアレバ行ッテ看病シテヤリ、・」
慈悲とは、相手の立場にたつ精神で、環境では生き物の立場に立つ事である。
小林さんはそれが"環境をやりたい"理由だと語られた。

最後に、環境教育に賢治の作品をどう生かすかという質問に、
子どもたちはただ読むのでなく、みんなで読み合い、
劇などで体験することも大切で、大人は変わらないぶん、
次世代を担う子ども達のこころを変えていきたいと閉めくくられた。

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