環境パートナーシップエコサロン

「環境を守るほど経済は発展する」
〜ゴミを出さずにサービスを売る経済学〜

平成14年8月23日

 8月エコサロンの講師、倉阪秀史さんは、環境政策を提言できる環境経済学の研究のため環境庁を退官、 現在は千葉大学で専門の研究や教育を行う傍ら、NPOの支援や三番瀬円卓会議の専門委員など幅広く活躍され、 市民と行政を結ぶキーパーソンの一人として期待されています。
今回は自著「環境を守るほど経済は発展する」(朝日新聞社)について熱く語られました。
1.環境を守るとはどういうことか
 今、身の回りの水質や大気質汚染、騒音や廃棄物から地球規模の温暖化やオゾンホール、 生物種の減少などさまざまな環境問題があります。
 環境問題は、ある人の活動が物理的自然的環境を媒介して、他の人の活動に悪影響を及ぼす問題といえます。 そして環境を守るとは、個人が健康に暮らせるような大気、水質などを適正に保ち、 社会の文化や制度を次の世代に引き継ぐことです。
チグリス・ユーフラテス川流域など古代文明の多くもまた、 豊かな森に生まれ、森の消滅とともに衰退したと言われています。
2.環境の限界
 人類は2回の人口爆発を経験しています。 一回目はおおむね12000万年前、農耕定住により食料増産と備蓄が可能になったときです。 その後、人口は安定していましたが、18世紀後半の産業革命を契機にふたたび増加をはじめ、現在も続いています。 今回も人口は増加後安定するでしょうか。
 石油や石炭などの枯渇性のエネルギー源は、まだ数百年はあるといわれていますが有限です。 さらにエネルギーを取り出したあとの不要物である二酸化炭素は地球温暖化を進行させることが明らかになり、 捨て場の制約が大きな問題です。一方、一年間に地球に降り注ぐ太陽エネルギーは、 人類が消費するエネルギーの一万倍もあり、更新性エネルギーとしての可能性が十分にありますが、 ほとんど手がつけられていません。
 また、人類が農業を営み、切り開くことで、陸上の生物資源を減少させ、さらにその4割を独占しています。 海洋でも漁業生産が生態系の復元能力の限界に達しているといわれています。
 環境の限界を技術で打開することができるでしょうか。原子力発電は資源に限りがあり、 放射性廃棄物の問題が残っています。核融合はまだ実用に程遠い上、やはり放射性廃棄物は発生します。 二酸化炭素の海中への封じ込めなどの技術も、分離・回収のためにさらに多くのエネルギーを要するなど、 無限のエネルギー源を技術で得ることができるというのは幻想です。
 環境の限界は地球規模であきらかで、増加した人口を養うために、資源の消費量、 二酸化炭素や廃棄物の発生量を抑制する政策が必要です。
3.経済学はどこで間違ったのか
 持続可能な範囲内に収めるための政策は、経済活動を停滞させるとして人気がありません。
 政府の経済政策は国内総生産や失業率など多くの経済指標を使って行われていますが、 経済の物的な規模には無関心です。これからは予算の編成や経済計画の策定といった経済政策の根幹部分に、 持続可能な規模を確保するという目標をしっかりすえることが必要です。
 従来の経済政策は自然の恵みと不要物の存在を無視する経済学に基づいて行われてきました。 経済の物的な規模に経済政策が関心を払わないのは、経済学の枠組みに一因があります。 経済学の枠組みに自然の恵みと不要物を位置づけ直す必要があります。
4.サービスの缶詰という考え方
 そこで、すべての製品は、サービスの缶詰だという考え方を提案します。 製品の目的は一定のサービスを消費者に与えることです。生産者は、資源・エネルギーを投入して、 製品と不要物を生み出します。このとき、生産者の知恵は、より不要物を少なくするように働く場面と、 ある製品から多くのサービスが提供されるように働く場面があります。このような枠組みで、 生産を把握すると、資源・エネルギーの投入量と不要物の排出量を減らして、 この企業が儲かるという場合があることがわかります。これが、共益状態です。
5.今後の環境政策の展望
 共益状態は、経営者が無関心であったり、不要物が無償で処理されたり、将来に排出されたり、 製品などが他人に譲り渡されたりした場合、十分に実現しません。 このために政策(環境経済政策)が必要なのです。
その概要は以下のとおりです。
@ 持続可能性目標の整備。 経済活動からの環境負荷の総量に関する目標を設定し、抑制する。
A 民間企業の競争と創意工夫を原動力として持続可能性目標を達成していく。
B 説明責任の確保。 自らの事業活動に関する環境情報や物の流れを環境報告書など明らかにする。
C 環境効率(付加価値/環境負荷)の採用。 
D 物ではなくサービスを売る動きを進展させる。
E 消費後の「サービス缶」を生産者に引き取らせる。
F 設計者が設計物のライフサイクルに渡る環境配慮をする。
G 自治体で地域にあった自然エネルギーの推奨など資源エネルギー政策をはじめる。
H 誘導策として環境税制改革。
I 環境行政と資源エネルギー行政の統合。

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